誰が天下を治めようと、幾年、戦乱の時が続こうと

色事の世界は悠然とただこの世に存在する



その男は

苦界よりもなおも罪深い

快楽と色欲の地獄へと落とす鬼



貴賎・老若・また性別を問わず、どのような者でも『最高』の陵辱を施し、
依頼主通りの『最低であり最高』の性奴に仕立てるその男を


人は


『調律師』


と呼ぶ









しとしとと、微かな音を奏でながら、大和の山の奥深くに抱かれるその屋敷に雨が注がれていた。
庭に面した部屋の中には、一人の男が書をしたためていた。
流れるように歪みがない、燻し銀の黒髪と、隆々としているわけではないが濃紺の小袖の上からもわかるほどに逞しい体躯を持ち、
男盛りを過ぎただろうに、なおも溢れるような色香を漂わす成熟した男振りは、女なら溜息を漏らすだろうと容易に想像つく。
精悍な顔の左頬に走る一筋の古傷。それは男を徒者ではない、と主張する烙印のようだ。
だが、体躯に相応しい大きな手が握る筆先が紡ぐ流麗な文字、
それに前髪を垂らさずに後ろで一つに結び、流している様などは、どこか細やかさを伺わせる。
豪快でありながらも繊細。そんな相反する性質を絶妙に混ざり合わせて、それを己が色にしている。
人によって印象が変わるだろう、掴み所のない不思議な男であった。
不意に、男の筆の先がぴたりと止まった。その数拍後―――閉められていた襖が開かれる。
開かれた先には、紅の小袖に鼠色の袴を身につけた青年。
焦茶の髪は室内の男とは違い奔放に撥ね、男と比べて薄いがそれでもやはり鍛えられた体。
真っ直ぐな気性がよくわかる眼が備わる凛々しい顔は室内の男より随分若い。
兄弟にしては年が離れているが、父子にしては年が近すぎる。

「左近殿、依頼主殿がお見えになりました」

すっと礼を示すよう、下げられた頭。
傅くのに慣れている青年といい、またそれに感慨もない男といい、どうやら主従の間柄のようだ。
左近と呼ばれた男は筆を置き、したためていた書を閉じると、立ち上がり青年の元へ向かう。

「幸村、鳴物は如何した?」
「既に部屋に通しております、足には常の通り枷をはめております」
「そうか……お前は鳴物の方に先に行っていろ、俺は依頼主の応対をしてから行く」
「畏まりました」

幸村と呼ばれた青年は一礼をし、奥の廊下へと進んで行った。
対して左近は逆―――玄関口に一番近い、依頼主がいる応接間へと向かって行った。



「待たせてすみませんね」

左近は対して悪びれた風もなく、そう謝罪をしながら応接間に入った。
応接間には一人の男―――小太りで、頭が禿げ上がった初老の武将が鎮座している。
左近の様子に気を悪くする事なく、人のよさそうなふくよかな顔に笑みを浮かべて

「いや、お気になさらず。ちょうど一服し終わった所です」

と返した。左近は机を挟んだ男の前に座ると、本題に切り出した。

「徳川さん、ですよね。調律条件はこちらでよろしいんで?」

懐から取り出した書状を広げ、依頼主の徳川に確認を取らせる。

「鳴物の名は石田三成、先の戦の総大将―――アンタが天下を取った戦の敗将だな?」

その言葉に徳川―――そう長い戦乱の世を終わらせた、勝者たる天下人の表情が一瞬、凍った。
……いや、凍ったというより、憤怒のため笑みが消えたというのが正しいか。
だが、左近は全く気にする事ないのか、よどみなく書状を読んでいく。

「調律内容は石田三成に対する性技の仕込み、性感の開発、また精神の快楽への屈服……
 快楽への屈服は具体的な要望がありますか?」
「………王道だが『昼は貞淑、夜は娼婦』というのは可能か?」

徳川のその言葉に左近は一瞬、酷く呆気に取られた顔を晒して、それから破顔した。

「ハ、ハハハハハッ……や、すまない。アンタがそういうのを好きとは思ってなかったんで」
「意外かね?」
「先の戦の相手だろ?だから俺はてっきり『色情狂手前まで快楽に漬けろ』とか言われると思ってたんで」
「白痴なあやつなどつまらぬよ、あやつは何処までも高潔なのがよい。そしてそのまま堕ちたらさぞかし麗しいであろうよ…」

そうどこかうっとりと呟いて、手にした扇子で机を叩く徳川は夢心地で、
左近は瞬時に、この男が石田三成にただならぬ感情―――
少なくとも憎しみなどの感情だけではない何かを抱えているのがわかった。

「条件は―――処女を散らさず、ですか。尻はどうします?」
「膣だけでよい」
「……わかりました、調律を承りましょ」

そういうと左近は書状を畳み、己が胸へと戻す。

「全身全霊をかけて、徳川さん……アンタが望む性奴に仕立てますよ。
 石田三成という鳴物に、アンタが望むがままの調律を………この鬼が、ね」

天下人に不敬にもそう言い切り、不遜に笑う男。
徳川は笑顔の下で、内心舌を巻いて、心中で呟いた。

(………これが稀代の調律師、ありとあらゆる者を狂わせ奏でる、天下無双の調律師……島左近、か)





徳川を見送ったその足で、左近はある部屋へ向かっていた。
奥へと続く廊下は鳴物―――依頼主に託された左近の調律相手、ようは性奴となるべく相手を監禁する部屋へ続くものだ。
ある一室―――頑丈ではあるが、意匠を凝らされたのがわかる、金子が幾等かけられたか計り知れない扉の前で止まり、その扉を開けた。
部屋の中は暗く、行灯の灯だけが仄かに部屋を照らしていた。
中央には一人の青年―――いや、男装をした少女がいた。
白磁の肌、闇でも輝いている紅茶の髪は垂らされ、細い背中や輪郭を覆っている。
身に漬けているのは彼の人の戦装束か、桃と黒、白を基調とした上着に袴。
陣羽織には家紋である下がり藤に己が姓の一字を金糸で刻み、背には信念たる「大一大万大吉」の文字。
――――――悲壮感を漂わせ、何処かやつれた雰囲気を纏ってはいるが、その姿は寸分なく違わない。
先の戦で破れた西軍の総大将・石田治部少輔三成の姿だった。

「幸村、下がっていろ」

その短い令に、部屋の入り口付近に控えていた幸村は一礼の後、部屋から出て行った。
扉が閉まった音と同時に、左近は三成の傍へ寄った。
近づいても三成は顔を伏せ、その髪と影で顔を隠している。

「ようこそ、始めまして、石田治部少…三成、だったな?」
「………貴様の名は聞いたことがある。人を貶める事にかけては、右に出る者がいない鬼、とな」

冷静な声とは裏腹に、見上げたその瞳は逸らされることなく、貫くように何処までも真っ直ぐで―――
戦に破れ、敵に囚われ、彼女の誇りを砕く辱めの限りを受けたであろうはずとは思えないほどに、
その鳶色の瞳に鮮烈な激情を宿していた。

(ほぉ、いい眼だ……それに………)

左近は感慨気に揉み上げを撫で付けながら、

(いい女だ)

と心中で賞賛した。
―――美貌の宰相、怜悧たる豊臣の女狐
評判はかねてよりこの大和の山奥に篭る左近も聞いていたが、実物を見るのは初めてだった。
血が通っているとは思えぬほど白く透明な肌、小作りな顔は人形よりも人形めいた美しさを持ち、
唇、鼻、瞳などのパーツから、その頭部の骨に至るまでが、神に愛されたとしか言えぬほど麗しい。
左近はそんな玲瓏たる姫を見下げ、彼女の神経を逆撫でするようにわざと大仰に言った。

「あらためて歓迎しますよ、石田治部少輔三成殿。
 ………そして今からアンタはこの屋敷で最低の奴隷となった。
 アンタの事情…戦に負けたとか、捕囚とかそういうのはどうでもいい。ただアンタは奴隷で、俺が主人だ。
 ―――――俺がアンタを、最高の性奴へしてみせますよ。後は全部、肉体へ叩きこんで差し上げますから、御安心を」

そう笑えば、眉一筋動かさない氷の美貌の中、唯一の色を見せる鳶色の瞳の中で、
軽蔑、憤怒、憎悪などを溶かしたような激情の色が増し、当人の要望とは逆に、三成の美貌を一層際立たせるのであった…。




はい、ここで終了ーこれ以上続きませんよー(ヤリ逃げかよ貴様!!!?)


元ネタはエロゲメーカー・アトリエか○やさんの出した調教ゲー「虜ノ姫」です。18歳未満の方は検索かけちゃダメですよー?内容的にはこんなですから。

やー、主人公とかキャラ設定に萌えてしまい、灰色の調教師→左近/檻の中の姫君(あえて言うなら気高き白の姫?)→三成/調教師の助手→幸村でやってみて、
でもエロ書けないし、つか調教事態が無理無理無理って事で冒頭だけ書いて放置という……(最低の極みだな)
本当は朱の淫魔→銀三成ってのも考えたんですが、そうすると調教師に病弱設定が復活するから諦めましたOTZ

一応、オチは考えたのですが(所詮私なので一応ハッピーED(調教ゲーなのに!?)、絶対気力もたない…つかこれだけでも気力削られた…。
だれかオチ教えるので書いてくれませんか…?(無茶言うな)

こんな中途半端な品物をお読みくださり、ありがとうございました!!


07/08/01/up




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