この命は俺のものでも

ましてや病にくれてやるものでもない




この命は、ただ



佐吉



お前のものだ








大谷刑部少輔吉継









先に死ぬのは怖くない


そう、鬼と呼ばれた男が怖れているのは





意地っ張りで何処までも気高い、


終の主の涙を拭えなくなる




そんなありふれた、些細な事








島左近勝猛









神様、私は罪人です


貴方の教えを知りながら
貴方の教えに背き
貴方の愛の御手を払うような生き方をしてまいりました




ですが 神様


貴方は沢山の人にその御手を差し出しますが
彼に対しては差し出す事すらしなかったでしょう?
だから私は彼についていきました



いつか 躓いた時に
この血塗られた手でも

彼を救えるように








神様、私は罪人です

だって私は恐れ多くも




貴方になりたかったのですから







小西摂津守行長









彼の人は前しか向いていなかった


主君が望みがため

己が命ず義がために


一度も振り替えることなく、

天に怖じず、地に恥じず

……断罪の刄を宿した瞳のまま、断罪され……




―――――六条河原に首が落つ―――――







石田治部少輔三成








あの人が生涯、恋い焦がれた女性は

藤の花のような女性だった


風が吹けば、花弁がはらはら散るように

憂いを常に、薄衣のようにその身に纏っていた女性



『詮なき事』


事あるごとにそう口にし、ただただ流され、その身を散らせた女性




ねぇ お市様


貴女にはすべて見えていたのですか?


すべてわかっていたのですか?



でも、嗚呼


それすらも今となっては




………詮なき、事………





北政所ねね








父は西につきました
弟もそれに続きました
友は西の総大将でした



ですが私は東につきました
妻が東寄りというのもありましたが
一番の理由は、『真田家安泰』のためでした

東西どちらが天下を握っても『真田家』が残るように、と



……………西が敗け、友は死に
父と弟は幽閉されました

真田家は残りましたが、
私の手からそれ以外は全て消え去りました



この選択に後悔はしておりませんが

誰が為でもなく、我がままに
そう生きた彼らと、私

それが時折、無性に悲しくなるのです





真田伊豆守信幸








我が主は豊臣家に殺されました




我が主君こと秀次様は
己が子が出来た太閤にとって不要となったがため
御身どころか
奥方様、若君、姫君
一族総てを黄泉路の供として現世を去りました



憎くて、憎くて、
涙も怒声も枯れるまで豊臣を怨みました



だけれども

我が主君を救おうと最期まで
手を、声を尽くしてくれたのは
その豊臣一の臣と言われる治部様で

その純粋で
曇りも曲がる事も知らないお人柄に触れ
私は


この人がおれば、私も豊臣を
秀次様が愛しんだ豊臣を許せるのではないか


と思い、主君が殺された後は
彼の方にお仕え申し上げました




太閤が死に、内府が天下を食らおうと牙を剥き、
治部様…主様がその阻止に立ち上がりました
太閤の世を、守る為に

関ケ原で内府と決した主様
兵力はほぼ互角、地形は我が軍が有利

ですが、我が軍唯一の『豊臣軍』であった
金吾中納言の裏切りにより、我が軍は敗けました




わかっていたのです
豊臣は我が主を殺すだろうと


秀次様
そして治部様

二人の主を殺したのは豊臣家


ですが、豊臣家よりも憎いのは
主を守れなかった、己自身


(神よ、仏よ、願わくばこの身と引き替えに…………)





石田家家臣舞兵庫









貴方と出会った日
空はかった



貴方と喧嘩した日
空はかった




貴方が無器用に謝ってくれた日
空はかった



貴方と笑いあった日々
空は抜けるようにかった







貴方が死んだ日

――――変わらずに空はかった――――


真田左衛門佐幸村


後書き
2007年10月の拍手でおいていた物7つに以前書いたもの(幸村の詩)を加えてみましたー。
一応、三成斬首追悼なのですがどう見ても関ヶh…ゲフンガフン!!!


詩は上手くも何ともないと自覚はしてるんですが、結構好きです。小説だとネタがまっさらでも詩ならギリギリ書けたりもしますし…(をい)
真田一家(幸村だけじゃなく昌幸パパンや信幸兄さんも)がかなり好きなんですが、ネタが出ない……ので信幸兄さん書いたのは己の趣味っす。
兄さんいいよ、兄さん(お前が言わなくても兄さんは素敵だと皆知ってるよ)






07/11/17/up



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