警告 この創作はScared Rider Xechsのファンディスク・STARDUST LOVERSの公式通販特典である 「Scared Rider Xechs 設定資料集」のネタバレが含まれます。その事を踏まえたうえでお読みください。 これは、世界の仕組みを理解していなかった愚かな男達の、過去の話。 世界の柱を破壊して、ゆっくりと紅と青の世界が分離していってた時代。ヨコハマ地区のとあるお屋敷…。 書斎にてデスクワークをしていたハヤトの耳に、賑やかな声と近づいてくる足音が入ってくる。 声の大半はまだ舌ったらずな幼い少女のもので、時たま聞こえてくるのは低く落ち着いた男のものだ。 会話内容まで聞き取れそうだな、と思った矢先に書斎の扉が叩かれた。 「ハヤト、ちょっとよろしいですか?」 外から聞こえてきたのは男の声―――紅の世界の住人で、互いの世界を崩壊から守るという目的で結ばれている同志・グランバッハのものだ。 「ああ、構わない」 そう返答した直後に勢い良く開かれた扉の先には、色白で長身の黒づくめの男―――先に会話したグランバッハと、 そうしてもう一人、グランバッハとは逆に柔らかな白いワンピースを着た、亜麻色の髪を持った幼気な少女がいた。 彼女こそ世界の柱を破壊した後に、柱の跡から生れ出でた存在。 青と紅の世界が繋がっていた時の世界の残し、とも言える存在で、世界にどのような影響を与えるか未知数故に この計画の立案兼実行者であるハヤト、そして完全に分離するまではグランバッハが養育を行っている。 正しくは監視なのだが、幼気な姿や何も知らない様を見る限り、世界に害を成す存在とはとてもじゃないが思えない。 ただの幼子のように、日々笑い泣きはしゃぎ、成長していく少女は、ハヤトにとってもグランバッハにとっても愛しい存在になっている。 その少女の名は………。 「アキラ、どうしたんだ?」 アキラ。そう、アキラと名付けたのだ。 互いの世界が煌めき、輝かしいものになれ、と名付けた名だが、 今そう願うは世界だけでなく、少女の行く末に関しても同じように思っている。 そのように思われている事など知らぬだろうアキラは、たたたっと小走りで室内にいるハヤトの元に駆け寄り、 「ハヤト、これなあに?」 後ろ手に持っていた何かを掲げるようにハヤトに見せる。 それは冊子で、表紙には子供向けらしい動物やら子供のデフォルメイラストが描かれている。 「『みんなのどうよう』……ああ、童謡集か」 「童謡、ですか?」 「どうようってなに?」 表紙に描かれた平仮名をそのまま読み上げたハヤトの言葉に、グランバッハとアキラは、同じように小首を傾げた。 まるで本当の親子のようにシンクロした二人の動作に、ハヤトは微笑ましさを感じて思わず笑みをこぼす。 これは長くなりそうだ、と思い、机に出している書類を片付けながら、ハヤトは説明する。 「子供向けの歌謡曲を纏めた冊子だ。古い曲や海外の伝統曲なんかも収録されているはずだ」 「歌曲……ですか」 ハヤトの言葉を聞いて、グランバッハは眉をしかめた。 グランバッハが属する世界である紅の世界には文学、舞踊、美術といった概念が存在しないと聞く。もちろん音楽も存在しない。 だから紅の世界の住人は、その手の芸術的なものを異質と感じ取り、苦手とするようだ。 特に静寂を愛するグランバッハからすると、静寂を乱す音楽は鬼門のようである。 「カキョクっておうたのこと?」 グランバッハの様子に気付かずに、アキラはキラキラした目でハヤトを見上げながら再度問うた。 アキラの様子にハヤトは意外に思い、思わず呟く。 「アキラは歌を知っているのか…?」 「テレビ…とやらで数度見かけたのですよ」 ハヤトの疑問に答えたのはグランバッハであった。 グランバッハはもとより、ハヤトもアキラに歌を歌ってやった事なぞなかったが、 なるほど、テレビなら国営放送で児童向けの歌謡番組があるから、アキラが知っていても疑問はない。 「あのね、おにんぎょうとかどうぶつがね、らららーってたのしそうにね、してたの」 そんな男二人の心中など知らぬアキラは、にこにこと楽しそうに手をぱたぱたしながら話す。 ばさばさ揺れる童謡冊子がアキラの手からすっぽ抜けて怪我でもしたら大変だ、とハヤトはさりげなく冊子を受け取る。 「アキラは歌が好きなのかな?」 「うんっ、だいすきっ」 ハヤトの問いかけに、笑顔のまま全力で答えるアキラ。 アキラの後ろに控えているグランバッハを見やれば、若干不服そうではあるが仕方がないとばかりに苦笑を浮かべていた。 グランバッハはアキラに壊滅的に甘い。 その溺愛っぷりは他の世界の住人と思えぬほどで、彼の存在を誤解しそうになるほどの愛しようだ。 彼女を保護する前のグランバッハを知っているハヤトは、グランバッハを苛立たせる事なく喧騒に巻き込めるのは、 古今東西探してもこの少女だけだろうな。と感じている。 「なら、今日はその本に載ってる歌を教えてあげようか」 「え、いいの!?」 「ああ、こちらは構わないよ。どうかな、グランバッハ?」 行っていたデスクワークは日常の延長のもので、さして急ぎのものはない。 それに会話しながら片付けていたため、既に机の上には書類一枚ない。 答えはわかっているが、一応グランバッハにも反応を聞いたが、案の定 「……小鳥のやりたいように」 との答え。 本当にアキラには甘い事だ、沸き出る笑いを噛み殺しながら、ハヤトは染々感じる。 そんな男二人の心中など、やっぱりわからないアキラは、二人の答えを聞いて 「ほんとに、ほんとにありがとう!ハヤト、グランバッハ!!」 と、満面の笑顔で告げ、その様を見た二人の頬は優しく緩む。 ―――……ああ、甘いのはお互い様か。 こっそり吐いたため息すら甘く、ハヤトはいよいよ笑いしか出なかった。 |
後書き
SRXFDの公式特典冊子で石寺とバッハさんとアキラさんが仲良く暮らしていた時期があったとあって、燃えたぎって捏造した。
アキラさん、ロリくしたのは趣味です。実際どうだったんだろうか。まあ「幼いアキラ」とあるくらいだから、ゲーム中での年頃ってことはさすがにないだろうが。
up/11/07/11
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