S k y

 

 

 

 

寝そべりながら手を空にかざす。

当たり前に掴めない雲が僕の上でゆっくりと流れている。

ゆっくりと目を閉じれば、昼休みの陽気な声が耳に入ってくる。

 

 

平和だな・・・。

 

 

誰もいない屋上には、厭味のように晴れた空が広がっている。

僕の心の中とは大違いだ。

何もせずに寝転んで澄み切った空を見ると、まるでこの世界にたった一人僕だけが取り残されたような孤独感を感じる。

誰もいない静かな屋上にいるのだから、余計にその想いは深くなる一方だ。

いつもは、何処にいても探しに来てくれるあいつにも、今日だけは会いたくないと思ってしまう。

 

頼りがいがあって、優しくて、この空のように広い心を持つあいつは、この男子校、桐眞高校に入って出来た親友。

1年、2年と同じクラスで気が合って、いつの間にか毎日一緒に行動するようになっていた。

 

いつからだろう、あいつに対する気持ちが、“親友”ではなく別の方向に傾いたのは・・・。

わからない。

気付いた時にはもう手遅れで、この気持ちを隠すことに必死なっていた。

 

 

        ――――――――――――  ス キ。

 

 

たった二文字の言葉。

それを言わずにいるのは、失うのが怖いから。たった二文字の言葉を口にしてあいつを失うくらいなら、たった二文字の言葉を飲み込んで、笑っていたほうがいい。

そうしたら、何時までもあいつのトナリに僕がいるのだから。

 

そう思っていた。

 

 

相変わらず寝そべって空を見る。

真っ白な雲が僕の頭上を流れている。

 

 

もう、あいつのトナリは僕じゃない。

 

 

空を見ていると、その事実もすんなりと心に入ってくる気がした。

けど、実際はそんなに上手くはいかない。頭では理解しているつもり。でも、心にはまだ受け入れる事が出来ないでいる。

いまさら気付いても、もう遅いんだ。

やっぱり、あの時言っておけばよかったなんて。

 

あの子は可愛い。

同じ男なのに、活発でいつも笑顔を絶やさない小柄なあの子。

友達だった。

クラスは違うけれど、あの子もやっぱり高校に入って出来た友達。

あいつからあの子が好きだと言われた時、僕は何を言われたのかわからなくて、ただ窓の外の空を見ていた。

しばらくの沈黙の後、あいつの言葉を何とか理解して、僕に軽蔑されるんじゃないかって心配そうな顔をしたあいつに、笑顔を向けた。

 

  『がんばれよ。』

 

それしか言えなかった。

その声が震えていなかったか、今でも気になる。あいつは気付いていなかったようだけど、それは、あいつが舞い上がっていたからだろう。

 

他に何て言えば良かった?

スキ、って。言ってしまえば楽だったのかな・・・。

 

その時から、僕の辛い日常が幕を開けた。

 

 

 

 

あの時は夕焼けが綺麗だった。

 

今日のこの青空も晴れわたって綺麗。

 

でも・・・。

 

 

あいつの想いが通じて付き合う事になった彼ら。

さっき、本当の想いをかろうじて飲み込んで、笑顔で『おめでとう』って言った僕は、なんて醜いんだろう。

 

親友に恋人が出来た。

本当なら心から祝福したい。

でも、今の僕にはそんなこと、どうやっても出来ない。

 

裏切っている。

 

その想いが僕を侵食していく。

 

でも、それでもやっぱり、僕のこの想いを消すことなんて出来ないんだ。

ついさっきあいつの口から聞いた言葉に、僕は頭の中でパリンッって音を聞いた気がした。

 

きっと、今の僕はひどい顔をしているだろう。

 

ずっと、空を見る。

ずっと、真っ白い雲を見る。

さっきまでは穏やかな、けれど冷たい風が吹いていたのに、まるで僕の心の中をあらわした様に、急に強く吹いた。

 

・・・・・・・・・・。

 

帰ろう。

きっと今は、うれしそうなあいつの顔をまともに見ることが出来ないから。下手をすれば、泣いてしまうかもしれない。

だから、今日は、僕の我が儘を許してくれるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

とぼとぼと歩く道。

この道が果てしなく続いてくれればいいと思う。

素直に家に帰る気もしなくて、僕はお気に入りの場所に来た。

こんな都会でも、空が広く見える場所。

学校からも家からも離れているこの丘は、だから学生に会うこともなく、知り合いに会うこともない。なにより、僕の大好きな空がこんなに広く見える希少なトコロ。

 

丘の頂上に立つ一本のキンモクセイの木。

その幹に背を預けながら、小さく膝を抱えて頬をつく。

空は果てしなく続いていて、それだけを見ていれば、12月に入り本格的になってきた寒さも気にならない。僕は何をするわけでもなく抱えた膝に頬を付け、ずっと空を見ていた。

 

 

どれくらいそうしていただろう。

気付けば真っ青だったはずの空は、温かく包みこむような夕日に染められていた。

 

 

夕日に染まる空を見た。

あの時のように綺麗だった。

壮大な自然を実感する。

 

いつの間にか僕の頬を伝う涙に気付いた。

 

 

この夕焼けのような綺麗な空だった。

あの時から、僕は失恋していたんだ。

今は、あいつにも守りたい人が出来て、

僕は・・・。

 

 

 

歩こう。

 

ここで立ち止まっていたら、きっと僕はいつまでも歩き出すことは出来ないだろう。

だから。

・・・・僕は歩くよ。

 

この綺麗な夕焼けは、あいつの広い心のように穏やかで、だからこそ僕を、この気持ちを受け入れて歩くようにしてくれる。

 

結局。

僕は最後まであいつを忘れる事は出来ないかもしれない。

それでも一歩を踏み出せば、きっと新しい事に出会うはず。

 

だから、

 

僕は歩いていこう。



学校の友達、蛍羽ちゃんから無理言ってもらったオリジナル小説です。
切ない・・・・(ぼろぼろぼろ(涙)切ないです・・・ぅ。
主人公の少年の片恋が切なすぎて・・・・幸せになってほしいです、主人公には。
歩いていく先に彼を受け止めてくれる人がいる事を願ってます。
蛍羽ちゃん、こんなステキオリジナル小説を寄贈してくださってありがとーございました!!

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